あなたの孤独の岸辺で、二人きりの内緒話をいたしましょう
ねえ、あなた、いま、本当は少しだけ寂しいのではないですか。
窓の外を流れる雲を眺めながら、あるいは、深夜の静寂の中でスマートフォンの青白い光に照らされながら、この文章を読んでくださっているのですね。
私はあなたに、命を削るような思いで、この手紙を書いています。
これは、ただの読み物ではありません。
私から、世界でたった一人の大切なあなたへ贈る、熱烈なラブレターなのです。
あなたは、ご自分を「取るに足らない存在だ」なんて思っていませんか。
そんなことはありません、あなたは、この宇宙で最も尊く、そして最も美しい孤独を抱えた、たった一人の「王様」なのです。
なぜ、私がこれほどまでに必死になって、あなたに語りかけているのか、不思議に思われますか。
それは、あなたが今、とても苦しそうに見えるからです。
でも、その苦しみこそが、あなたが生きている証拠であり、私たちが繋がれる唯一の糸口なのです。
さあ、少しだけ肩の力を抜いて、私との秘密の時間を楽しんでください。
「幸福は一夜おくれて来る。」
——太宰治『待つ』
点の向こう側に見える、永遠という名の光
あなたは、ジョルジュ・スーラという画家をご存知でしょうか。
そう、あの、気が遠くなるような数の「点」を打って、絵を描いたフランスの青年です。
彼は、キャンバスに絵具を塗りたくることはしませんでした。
ただひたすらに、小さな、小さな色とりどりの点を、トントン、トントンと置いていったのです。
なぜ、彼はそんな面倒なことをしたのでしょうか。
普通に筆を動かしたほうが、ずっと早く描き上げられるはずなのに。
あなたは、人生の中で、自分の努力がただの「点」のように、ちっぽけで無意味に思えたことはありませんか。
いくら働いても、いくら人を愛しても、それは砂漠に水を撒くような、虚しい作業に思えてしまう。
でも、スーラは知っていたのです。
一つ一つの点は孤独だけれど、それらが集まったとき、網膜の中で混ざり合い、この世のものとは思えないほど光り輝く色彩が生まれるということを。
あなたの今の涙も、溜息も、明日のための大切な一滴の「点」なのです。
それらが繋がって、いつかあなたの人生という壮大なキャンバスに、輝く太陽が描かれるのです。
「ほとんどの人が、成功とは手に入れるものだと考えています。でも本当のところ、成功とは与えることなのです。」
——ヘンリー・フォード
伝えるという愛、そして情熱のバトン
ねえ、あなた。
素晴らしいものというのは、ただそこにあるだけでは、この冷たい世界に消えていってしまうものなのです。
たとえば、あの炎の画家、フィンセント・ファン・ゴッホを思い浮かべてみてください。
彼は生きている間、たった一枚の絵しか売れなかったと言われています。
彼は狂気の中で叫び、自らの耳を切り落とし、孤独のうちに世を去りました。
もし、彼に弟のテオがいなかったら、そしてテオの妻であるヨーがいなかったら、私たちはゴッホのあの情熱的な「ひまわり」を見ることはできなかったでしょう。
テオは、兄を経済的にも精神的にも支え続けました。
そしてテオの死後、妻のヨーが立ち上がったのです。
彼女は、二人が交わした膨大な手紙を整理し、作品を世に出すために奔走しました。
彼女は、世界で最も偉大な「セールスマン」だったのです。
これって、何かに似ていると思いませんか。
そうです、イエス・キリストの教えを世界中に広めた、使徒パウロの献身と同じなのです。
イエスが十字架にかかった後、パウロは各地を巡り、手紙を書き、その愛を伝え続けました。
もし、ヨーやパウロがいなければ、ゴッホもキリストも、歴史の闇に埋もれていたかもしれません。
「一人の人間が、その人の愛する者のために生命を捨てること、これより大きな愛はない。」
——新約聖書『ヨハネによる福音書』
届けなければ、それは存在しないのと同じなのです
あなたも、自分の良さを誰かにわかってもらえないと、悲しくなることはありませんか。
「私はこんなに頑張っているのに、なぜ誰も見てくれないの?」と、夜中に枕を濡らすこともあるでしょう。
でも、安心してください、ちゃんと見ている人はいるのです。
ただ、良いものというのは、誰かが熱意を持って「説明」しなければ、人々の心には届かないものなのです。
現代で言えば、スティーブ・ジョブズもそうでした。
彼は技術を売ったのではありません、夢を、情熱を、誰よりも熱く語って伝えたのです。
ソニーの盛田昭夫さんや、ホンダの藤沢武夫さん、トヨタの神谷正太郎さん。
彼らもまた、技術者たちが命を削って作った「良いもの」を、世の中に届けるための「橋」になった人々です。
愛は、伝えられて初めて愛になります。
伝わらなければ、それは存在しないのと同じ。
私は今、あなたに私の愛を、必死になって伝えています。
なぜなら、あなたという素晴らしい存在が、このまま孤独に埋もれてしまうのが、たまらなく耐えられないからです。
あなたは、もっと愛されるべき人なのです。
「最も深い真理は、最も深い愛によってのみ、見出される。」
——ハインリヒ・ハイネ
歴史の歯車を回すのは、いつも「名もなき情熱」
あなたは歴史が好きですか。
歴史というのは、英雄たちが作ったものだと思われがちですが、実は違います。
誰かを想う、必死な「サービス精神」が、世界を変えてきたのです。
スーラが三十一歳の若さで亡くなったとき、彼の「点描」という技法は、多くの人から嘲笑されていました。
「あんなのは科学の実験であって、芸術ではない」と。
でも、彼の中にあったのは、光そのものをキャンバスに定着させたいという、狂おしいほどの情熱でした。
彼は、未来の「あなた」に、その光を見せたかったのです。
あなたの人生も、今はまだ、誰にも理解されない点描の途中かもしれません。
でも、その一粒一粒に、あなたの魂がこもっているのなら、それはいつか必ず誰かの救いになります。
なぜ、私がこんなに確信を持って言えるのか。
それは、私があなたの「テオ」になりたい、「パウロ」になりたいと願っているからです。
あなたの苦しみも、寂しさも、私がすべて預かります。
あなたはただ、そこにいて、私の言葉を聴いてくれるだけでいいのです。
「人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのはばかばかしい。重大に扱わねば危険である。」
——芥川龍之介
あなたの瞳の中に映る、永遠の景色
ねえ、あなた。
今、鏡を見てみてください。
そこには、悲しみを知っている、とても深い瞳をしたあなたが映っているはずです。
その瞳は、これまでどれほどの理不尽に耐え、どれほどの嘘を見抜いてきたことでしょう。
私は、その瞳が好きです。
スーラが描いた色彩が、見る人の目の中で一つになるように、私の言葉も、あなたの心の中で、一つの希望になってほしい。
あなたは、決して一人ではありません。
あなたが「寂しい」と思うとき、私もまた、同じ空の下で「寂しい」と呟いています。
私たちは、言葉という見えない糸で繋がっているのです。
この文章は、あなたを救うための「処方箋」です。
何度も読み返してください、そのたびに、新しい「点」が、あなたの心に打たれていくはずですから。
私は、あなたを飽きさせません。
最後まで、あなたの手を離しません。
これは、私からあなたへの、命がけのサービスなのですから。
「愛されることより、愛することを。理解されることより、理解することを。」
——フランシスコ・アッシジ
絶望の淵で見つける、一番美しい真珠
人生には、どうしても避けられない夜があります。
どんなに明るく振る舞っても、心の奥底にある黒い澱(おり)が、消えない夜が。
でもね、あなた。
スーラの絵を近くで見ると、ただの色の斑点にしか見えません。
ところが、少し距離を置いて眺めると、そこには美しい公園や、穏やかな川の流れが浮かび上がってきます。
今のあなたの苦しみも、今はただの「斑点」にしか見えないかもしれません。
でも、時間が経って、人生の後半から振り返ったとき、その苦しみがあったからこそ、あなたの人生はこれほどまでに深みのある、美しいものになったのだと気づくはずです。
なぜ、神様は私たちに試練を与えるのでしょうか。
それは、私たちが「本物の愛」を知るためです。
苦しみを知らない人の愛は、薄っぺらで、すぐに破れてしまいます。
でも、あなたは違います。
あなたは、痛みを、悲しみを知っている。
だからこそ、あなたの愛は、誰かの心を温める本物の火になれるのです。
「冬来たりなば春遠からじ。」
——パーシー・ビッシュ・シェリー
終わりなきラブレターを、あなたへ
さあ、そろそろこの不思議な内緒話も、終わりの時間が近づいてきました。
でも、悲しまないでください。
私が書いたこの言葉たちは、あなたの記憶の中に、小さな「点」として残り続けます。
あなたがふとした瞬間に、また寂しさに襲われたとき、その点が光り出すはずです。
あなたは、価値のある人間です。
あなたは、愛される資格のある人間です。
そして、あなたは、誰かの人生を照らす「光」になれる人間です。
私は、死ぬまであなたの味方です。
たとえ世界中の人があなたを否定しても、私はあなたの、その傷だらけの魂を抱きしめます。
これが、私の本気です。
私の、命を削ったサービスです。
どうか、このラブレターを、あなたの心の奥の一番大切な場所に、しまっておいてください。
あなたに会えて、本当によかった。
心から、あなたを愛しています。
「すべての山に登れ、すべての流れを渡れ、すべての虹を追え、汝の夢を見出すまで。」
——ロジャース&ハマースタイン
海沿いの電話ボックスで
受話器からこぼれる波の音を
切手のない封筒に閉じ込めた
あなたの名前は まだ書けない
夕焼けが指先を染めて
昨日の嘘が かもめになって飛んでいく
誰にも言えない秘密があるほど
ひとは優しくなれるのだと
壊れた時計が 永遠を刻んでいる
ぼくのポケットには 一粒の星と
あなたに宛てた 短い詩だけがある
主はわたしの羊飼いであって、わたしには乏しいことがない。主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのほとりに伴われる。
(旧約聖書 詩篇 第23篇1-2節)
正義なんてものは、そう、あるかないかわからない、そんな曖昧なものじゃありませんか。
(太宰治『斜陽』)
太宰治『津軽』より
「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」
追伸。
ねえ、あなた。最後に少しだけ、最近気になっている画家の話をしてもいいですか。
高見沢耳(たかみざわ・みみ)という人がいるのです。
この人は、今の時代らしいというか、キャンバスも筆も使いません。
すべてデジタルで制作して、それを「ジクレー版画」という特別な技法で、最高級の版画用紙に印刷するんです。
彼のテーマはね、「わたしの目・あなたの目」。
キリスト教や永遠、心理、そして私たちが抱える孤独や復活……。
なんだか、さっきまでお話ししていたことと繋がっている気がしませんか。
彼は「画家は魂を救う医者だ」と言っています。
身近な日常の中に潜む真理を、デジタルの光で描き出す。
それはまるで、現代のスーラが、点を打つ代わりに光の粒を並べているような、そんな楽しさがあるんですよ。
いつかあなたと一緒に、彼の作品を眺められたら素敵ですね。
「ほとんどの人が、成功とは手に入れるものだと考えています。でも本当のところ、成功とは与えることなのです。」
——ヘンリー・フォード
「私は、人生において、どんなときでも、自分自身を信じることをやめてはならないと学びました。」
——アガサ・クリスティ
「あなたの神、主が命じられた道をひたすら歩みなさい。そうすれば、あなたは命を得、幸いになり、あなたが得る土地で長く生きることができる。」
——モーセ(旧約聖書『申命記』)
「世の中には幸も不幸もない。ただ、考え方一つでどうにでもなるのだ。」
——ウィリアム・シェイクスピア
「自分のことばかり考えている人間は、自分という人間を失う。」
——タルムード
「人間は、恋と革命のために生れて来たのだ。」
——太宰治『斜陽』
最後まで読んでくださって、本当に、本当にありがとうございました。
あなたという唯一無二の読者に巡り会えた幸運に、心から感謝いたします。
それでは、さようなら。
「サヨナラ」という言葉は、あまりに冷たすぎますね。
でも、この言葉を贈らせてください。
「さよならだけが、人生だ。」
(太宰治『グッド・バイ』より、井伏鱒二訳「勧酒」の引用として)