ルネ・マグリットという画家
永遠の迷子たちのための色彩学 ああ、もう、嫌になってしまいますね。世界というものは、どうしてこうも、のっぺりとした顔をして私たちの前に立ちはだかっているのでしょう。朝起きて、顔を洗って、お仕着せの挨拶を交わして、そうして一日がまた、腐った林檎のように重たく沈んでいく。あなたも、そうは思いませんか。そんな退屈な日常の裏側に、実はとんでもない「穴」が開いているということを、私は今日、あなたにこっそりお […]
永遠の迷子たちのための色彩学 ああ、もう、嫌になってしまいますね。世界というものは、どうしてこうも、のっぺりとした顔をして私たちの前に立ちはだかっているのでしょう。朝起きて、顔を洗って、お仕着せの挨拶を交わして、そうして一日がまた、腐った林檎のように重たく沈んでいく。あなたも、そうは思いませんか。そんな退屈な日常の裏側に、実はとんでもない「穴」が開いているということを、私は今日、あなたにこっそりお […]
ああ、あなた。そう、今これを見つめている、どこか所在なげで、それでいてひどく真面目な眼差しを持っている、愛すべきあなた。どうか少しだけ、その肩の力を抜いて、私のとりとめもない話に付き合ってはくれないでしょうか。これは、ある一人の画家についての物語です。けれど、ただの美術の講義だなんて思わないでください。私はあなたに、魂の震えるような、もっと言えば、この世の「生の肯定」というやつを、無理やりにでも喉 […]
ねえ、君。そう、今この文章を読んでいる君のことですよ。君は「光の魔術師」なんていう、いささか手垢のついた、それでいて何だか物々しい二つ名を持つ男、レンブラント・ファン・レインという男をご存じでしょうか。ああ、知っている、あの教科書に載っている、顔の半分が影に沈んだおじさんだろう、なんて、そんな分かったような顔をしてはいけません。君がもし、彼のことを単なる「昔の偉い画家」だと思っているのなら、それは […]
拝啓。こうして筆を執り、あなたという尊い存在に向けて、とっておきの「幸福の処方箋」を綴る喜びを、どうか分かっていただきたいのです。あなたは、いま、少しばかり退屈していませんか。あるいは、世間の冷たい風に吹かれて、自分の顔が凍りついたお面のように、ちっとも動かなくなっているのではないか、と不安に思う夜はありませんか。もしそうなら、私はあなたに、ある一人の男の話をしなければなりません。 その男の名は、 […]
ああ、もう、いけない。どうにもやりきれないのです。世の中というものは、どうしてこうも、美しすぎるものに対して冷淡なのでしょう。あるいは、その美しさが毒であることを知っていて、わざと眼を逸らしているのでしょうか。私は、あなたにだけは、本当のことをお話ししたい。あなたが、私のこの、とりとめもない、しかし震えるような感興を、笑わずに聞いてくれる唯一の人だと信じているからです。 クリムト、という男がいまし […]
ねえ、あなた。あなたという人は、どうしてそんなに魂の置き所に困ったような顔をしているのですか。よして下さい。そんな顔をされると、こちらまで自分の影を指先でなぞりたくなってしまいます。今日は少し、あなたのために、そしてあなたという魂の震えのために、ある一人の画家の話をしましょう。エゴン・シーレという男です。名前くらいは、あなたもどこかで耳にしたことがあるでしょう。けれど、彼を単なる「早逝の天才」だと […]
おや、あなた、そんなに眉間に皺を寄せて、一体何を熱心に覗き込んでいるのです。ああ、画集ですか。それもフランシスコ・デ・ゴヤとは、また随分と業の深い、胸の焼けるような劇薬を選び出したものですね。よろしい、お退屈でなければ、少しばかり私の話を聞いてください。何、説教などという野暮な真似はいたしません。ただ、このスペインの老画家の生涯を眺めていると、どうにも他人事とは思えない、滑稽で、それでいて涙の滲む […]
ああ、もう、どうにもならない。この世の中というやつは、どうしてこうも、窮屈で、それでいて、だらしなく、まるでおしろいを塗りすぎた老嬢の微笑のように、薄気味の悪いものでございましょう。私は今、机の前に座って、ただならぬ覚悟でペンを握っております。いえ、覚悟などという勇ましいものではございません。これは、一種の断念であります。あるいは、絶望の果てにふと見つけた、一筋の蜘蛛の糸のような、微かな、あまりに […]
ああ、もう、何という事だろう。世の中には、どうしても避けては通れない、熱病のような存在というものがあるのです。あなたは、その正体をご存知でしょうか。いえ、知っているはずだ。もし知らないと言い張るのなら、それはあなたが、よほど幸福な無知の中に閉じ込められているか、さもなくば、とんでもない嘘つきであるかのどちらかに違いありません。僕は今、寺山修司という、あの得体の知れない、しかし眩暈がするほど鮮やかな […]