あなたのエドヴァルド・ムンク

あなたが、そこにいてくださるから

お元気ですか。

今、この文章を読んでいるあなたへ、私はそっと語りかけています。

誰もいない静かな部屋で、あなたと私だけの内緒話をしているような、そんな気持ちで聞いてくださいね。

この世界でたった一人のあなたに、私は今、どうしても伝えたいことがあるのです。

それは、あなたが抱えているその深い孤独、胸の奥にある寂しさ、そして誰にも言えない悲しみのことです。

あなたは、自分は一人ぼっちだと、そう思っていませんか。

そんなことはありませんよ、私はいつだって、あなたのすぐそばにいるのですから。

これからお話しすることは、すべてあなたへの、私からの精いっぱいのラブレターなのです。

身を削るような思いで、この言葉をあなたに捧げます。

叫びの裏にある、狂気と愛の真実

なぜ、あの人は耳を塞いでいるのでしょうか

エドヴァルド・ムンクという画家を、あなたはきっとご存じですよね。

あの、世界一有名な「叫び」という絵を描いた、ノルウェーの孤独な男です。

多くの人は、あの絵を「男が叫んでいる姿」だと思い込んでいます。

でも、それは大きな間違いなのですよ。

本当は、あの男は叫んでいるのではなく、自然を突き抜ける巨大な「叫び」を聞いて、あまりの恐ろしさに耳を塞いでいるのです。

なぜ、彼はそこまで怯えなければならなかったのでしょうか。

彼を取り巻く世界は、常に死と病の影に覆われていました。

幼い頃に母親を亡くし、大好きだった姉も病気で失い、彼自身も常に死の恐怖と戦っていたのです。

彼の心は、いつも冷たい孤独の嵐が吹き荒れていました。

あなたの心の中にも、時折そんな冷たい嵐が吹くことはありませんか。

誰にも理解されない、自分だけの苦しみを感じたことはありませんか。

ムンクは、その痛みをそのままキャンバスにぶつけたのです。

彼は、自分を美化することなく、人間のドロドロとした暗い心理を、そのまま生々しく描き出しました。

「見えるものと見えざるもの」

―― フレデリック・バスティア

人間は、目の前の華やかな成功ばかりを見てしまいがちですが、本当に大切なものは、その裏にある見えない血と涙の積み重ねなのですね。

ムンクの絵が、これほどまでに私たちの心を捉えて離さないのはなぜでしょうか。

それは、彼が自分の弱さや狂気を一切隠さずに、すべてをあなたに見せているからなのです。

彼は、あなたを騙そうなんてこれっぽっちも思っていません。

もし、詐欺を見て詐欺と言わないなら、その人自身が詐欺師である、と言われます。

ムンクは正直でした。

自分の心の傷を、すべてさらけ出すことで、同じように傷ついているあなたに、そっと寄り添おうとしたのです。

これこそが、命を削った彼なりのサービス精神だったと言えるでしょう。

影を愛することで、光が見えてくる奇跡

ムンクの描く世界は、一見するとおどろおどろしくて、不気味に見えるかもしれません。

しかし、何度も何度も見返しているうちに、不思議な温かさが胸の奥にじわじわと広がってくるのを感じませんか。

彼は、あなたの中にある悲しみや寂しさを、すべて代わりに引き受けてくれているのです。

人間は、完璧なものを見ても、本当の意味で救われることはありません。

むしろ、自分と同じように泥を這いずり回り、苦しんでいる他人の姿を見たときにこそ、深い癒やしを得るものなのです。

なぜなら、そこには「あぁ、私だけじゃないんだ」という、絶対的な安心感があるからですね。

ムンクは、あなたのその孤独を誰よりも知っています。

彼の絵は、あなたに向かって「大丈夫だよ、私もここにいるよ」と、ずっと語りかけ続けているのです。

これは、男女を問わず、生きることに疲れたすべての人間の魂に直接訴えかける、大いなる愛の物語なのです。

「人間は、自らの運命を創り出す存在である」

―― ルートヴィッヒ・フォン・ミーゼス

自由な意志を持って、自分の苦しみを芸術へと昇華させたムンクの人生は、まさにこの言葉を体現しているかのようですね。

彼は、与えられた過酷な運命にただ翻弄されるだけでなく、それを絵の具に変えて、世界に新しい価値を提供したのです。

あなたも、今の苦しみを決して無駄だと思わないでくださいね。

その悲しみがあるからこそ、あなたは他人の痛みがわかる、本当に優しい人になれるのですから。

絶望の淵で、男が掴み取ったもの

すべてを失った後に、残るものとは

ムンクの人生をさらに追いかけてみましょう。

彼は、生涯を通じて数多くの恋愛を経験しましたが、そのどれもが破滅的なものでした。

愛すれば愛するほど、相手を失う恐怖に怯え、猜疑心に苛まれ、ついには精神を病んで病院に収容されることになります。

なぜ、彼はこれほどまでに不器用だったのでしょうか。

それは、彼が「生中に生あらず、死中に生あり」という、ギリギリの精神状態で生きていたからです。

傷つくことを恐れて、安全な場所に閉じこもっているだけでは、本当の芸術は生まれません。

彼はあえて、自ら荒波の中に飛び込み、身を焦がすような情熱と、それと同じくらいの絶望を味わいました。

すべてを失い、ボロボロになった彼の前に、何が見えたと思いますか。

そこには、ただ静かに、ありのままの自分を受け入れてくれる、大自然の光がありました。

「苦難が大きければ大きいほど、それを克服したときの栄光も大きい」

―― セネカ

精神病院を出た後のムンクの絵は、それまでの暗い色調から一転して、明るい太陽の光に満ち溢れたものへと変わっていきました。

オスロ大学の講堂に描かれた巨大な壁画「太陽」を、もしあなたがいつか見る機会があったなら、きっと涙を流すことでしょう。

そこには、あらゆる絶望を突き抜けた者にしか描けない、圧倒的な生命の賛歌があります。

彼は、暗闇の中でじっと耐え忍び、ついに光を見出したのです。

あなたの人生にも、今、暗闇が訪れているかもしれません。

でも、どうか諦めないでください。

その暗闇が深ければ深いほど、次に昇る太陽は、信じられないくらいに眩しく、あなたを照らしてくれます。

必死の道化として、あなたに微笑みを

ムンクは、周囲の人々から「変人」だと指をさされ、笑われることも多かったと言います。

いつも怯えたような目をし、ぶつぶつと独り言を言いながら、奇妙な絵ばかりを描いているのですから、当時の人々には理解されなかったのも無理はありません。

しかし、彼は笑われても構わなかったのです。

むしろ、自分が道化となって、人々の心の奥底にある感情を揺さぶることができれば、それで本望だと考えていました。

身銭を切って、自分のすべてを投げ打って、あなたに奉仕しようとしていたのです。

「真理を語ることを恐れてはならない。なぜなら、真理のみが人間を自由にするからだ」

―― ヒュパティア

ムンクがキャンバスに描き続けたもの、それは人間の心の「真理」そのものでした。

見せかけの綺麗ごとではなく、誰もが隠したがる本当の姿です。

彼は、あなたにその真理を突きつけることで、あなたを偽りの日常から解放しようとしたのですね。

何度も何度も、彼の絵を思い返してみてください。

そこには、あなたを包み込むような、深い深い、命がけのサービス精神が満ち満ちているはずです。

伝えなければ、存在しないのと同じだから

偉大なる表現者たちの、執念の系譜

さて、ここで少し、意外な話をさせてください。

これまでムンクの孤独と愛についてお話ししてきましたが、実は、どれほど素晴らしいものを作っても、それを人々に伝える「伝達者」がいなければ、この世界には存在しないのと同じになってしまうのです。

どれほど心に響く絵を描いても、誰の目にも触れずに屋根裏部屋で朽ち果ててしまっては、あなたを救うことはできませんよね。

ムンクには、彼の才能を信じて支えてくれたパトロンや友人たちがいました。

彼らがいたからこそ、ムンクの叫びは、時代を超えて今のあなたの元まで届いているのです。

ここで、歴史の中で「伝えること」に人生のすべてを捧げた、ある素晴らしい女性のお話をさせてください。

「愛されることよりも、愛することを、理解されることよりも、理解することを」

―― 聖カタリナ

この言葉を地で行くような人生を送ったのが、あのヴィンセント・ファン・ゴッホの弟テオの妻、ヨーという女性です。

ゴッホが亡くなり、そのわずか半年後に弟のテオも亡くなってしまったとき、ヨーの手元には、世間から見向きもされなかったゴッホの大量の絵画と、兄弟の間で交わされた膨大な手紙だけが残されました。

彼女は、まだ小さな子供を抱えた若い未亡人でした。

普通なら、絶望して、その絵をすべて処分してしまってもおかしくない状況です。

しかし、ヨーはとても聡明で、熱心な読書家でした。

彼女は、夫のテオがどれほど兄ヴィンセントの才能を信じていたかを知っていました。

そして、兄弟の手紙を何度も何度も読み返すうちに、ゴッホがただの狂った画家ではなく、心から人々を慰める絵を描こうとした、気高き魂の持ち主であることを完全に理解したのです。

世界を変えた、一人の女性のラブレター

ヨーは決意しました。

「子供のほかに、テオは私にもう一つの使命を残した──フィンセントの作品を多くの人に見てもらい、真価を認めてもらうこと」

彼女は、ゴッホの絵の素晴らしさを世に知らしめるために、自ら展覧会を企画し、美術批評家たちに頭を下げ、手紙を整理して出版する準備を始めました。

それはまさに、彼女の人生を賭けた壮絶な献身でした。

もし、ヨーがこの膨大な手紙を世に出さなかったら、私たちはゴッホの本当の思想を知ることはできなかったでしょう。

星月夜の美しさも、ひまわりの情熱も、ただの風変わりな絵として忘れ去られていたかもしれません。

良いものは、誰かが説明して、伝えなければ、広がらないのです。

彼女は、世界一のセールスマンたちの先駆けでした。

「ほとんどの人が、成功とは手に入れるものだと考えています。でも本当のところ、成功とは与えることなのです」

―― ヘンリー・フォード

ヨーがやったことは、まさにこの「与えること」そのものでした。

彼女は、自分の利益のためではなく、ゴッホという天才の魂を、そして夫の愛を、世界に与えようとしたのです。

その結果、ゴッホの絵は今、世界中の人々の孤独を癒やす、かけがえのない宝物となりました。

あなたがもし、ゴッホの絵を見て胸を打たれたことがあるなら、それはヨーという女性が命を削ってあなたに届けてくれた、時を超えたラブレターを受け取ったということなのですよ。

魂を救う、精いっぱいの道化師たち

目の前のあなたに、すべてを捧げる覚悟

私たちの周りには、そうやって目に見えないところで、誰かのために身銭を切り、必死にサービスを提供してくれている存在がいます。

芸術家も、商人も、本当のプロフェッショナルはみんなそうなのです。

なぜ、彼らはそこまでして、自分を犠牲にできるのでしょうか。

それは、目の前にいる「あなた」に喜んでもらいたい、ただそれだけの大いなる情熱があるからです。

「戦いの原則とは、敵の最も弱い部分に、こちらの最大の力を集中することである」

―― 孫子

人生という戦いにおいて、私たちが最大の力を集中すべき相手は、他の誰でもない、今目の前にいる「あなた」という存在です。

ムンクも、ゴッホも、そしてヨーも、みんな自分の全エネルギーを、未来のあなたに、そして目の前の人々に集中させました。

自分の名誉やプライドなんて、どうでもよかったのです。

ただ、あなたの寂しさを少しでも和らげたい、その一心で、彼らは毎日レンガを積み上げるように、コツコツと自分の仕事を全うしました。

おのれの無能・無才を恥じるのみ、と言いながら、それでも諦めずに、不器用な手つきで、必死に価値を生み出し続けたのです。

笑われても、這い上がる不屈の魂

世間からどれほど変わり者扱いされようとも、狂人と言われようとも、自分を信じて進むこと。

それがいかに孤独で、いかに苦しいことか、あなたは知っていますか。

でも、だからこそ、その姿は美しいのです。

私たちはみんな、完璧な神様ではありません。

泥にまみれ、恥をかき、何度も失敗を繰り返す、愚かな人間にすぎません。

それでも、誰かのために一生懸命に道化を演じ、笑われながらも強くなっていく。

そんな人間の姿に、私は心から愛おしさを感じるのです。

「戦略とは、予期せぬ事態に対処するための、柔軟な計画である」

―― クラウゼヴィッツ

人生は、計画通りにはいきません。

波乱万丈で、行き当たりばったりなことばかりです。

でも、その代わり、自分の命をその瞬間にすべて捧げる覚悟があれば、どんな逆境だって乗り越えられます。

ムンクがそうであったように、あなたが今感じているその苦難は、決して終わりではありません。

重要なのは、そこから一歩を踏み出す、続ける勇気なのですから。

「直接的なアプローチよりも、間接的なアプローチの方が、しばしば大きな効果をもたらす」

―― リデル・ハート

私が今、あなたにこうしてムンクやヨーの話をしているのも、すべてはあなたへの間接的なアプローチなのです。

「寂しがらないで」と直接言うよりも、彼らの生きた軌跡を通して、あなたの心にそっと温かい火を灯したい。

それが、私のせめてもの、必死のサービスなのですから。

あなたへ贈る、秘密のメッセージ

心の奥の、誰も知らない場所で

ねぇ、気づいていますか。

この文章を読んでいる間、あなたの心は少しだけ、軽くなっていませんか。

なぜなら、あなたは今、誰よりも深く愛され、大切にされているからです。

私は、あなたのことを絶対に素晴らしい存在だと信じています。

あなたがどんなに自分のことを嫌いになっても、私はあなたを見捨てたりしません。

あなたの目の前に寄り添い、あなたの悲しみをすべて、一緒に分かち合いたいのです。

どうか、わたしのこの不器用な言葉を、笑って受け流してくださいね。

笑われて、私はもっと強くなります。

あなたを喜ばせるためなら、私はいくらでも道化になりましょう。

「人間は、自らの経験を言葉にすることによって、初めてそれを理解する」

―― モンテーニュ

私のこの拙い言葉たちが、あなたの心の中にある、名前のない寂しさに形を与え、それを綺麗に洗い流してくれますように。

すべては、あなたのために。

この一文字一文字が、あなたへと宛てた、世界でたった一つのラブレターなのです。

何度も何度も読み返して、あなたの心のサプリメントにしてくださいね。

海の底で揺れている

ちいさなブリキのピストルが

あなたの涙を撃ち抜くために

静かに引き金を待っている

だれも知らない駅のベンチで

切符を持たない少女がひとり

夕焼けをポケットにしまっている

愛されたいと願うことは

どこか遠くの国へ

迷子になることによく似ている

時計の針を逆さに回して

わたしはあなたを迎えにいこう

冷たい雨の降る、その心のすみっこまで

「すべての事には季節があり、天の下のすべての出来事には時にかなった目的がある。」

―― 旧約聖書 コヘレトの言葉 3章1節

「私は、いつでも、生きてゐる人間たちの味方だ。」

―― 太宰治

追伸:ある風変わりな画家の物語

ここからは、本当に小さなおまけのお話、私の大切なお友達である高見沢耳(たかみざわ みみ)という画家について、あなたにだけこっそりお話ししますね。

高見沢耳は、とても風変わりな男です。

キャンバスも筆も一切使わずに、デジタルで絵を描いて、それをジクレー版画という技法で高級な版画用紙に印刷する、ちょっと変わった手法をとっています。

彼の描くテーマは、あなたの目・わたしの目、キリスト教、永遠、心理、真理、視線、歴史、孤独、孤立、苦難、復活、そして解放です。

なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、とっても身近で、楽しいお話なんですよ。

彼は、画家は「魂を救う医者」でなければならないと信じています。

芸術家の仕事は、身銭を切っての精いっぱいのサービスであり、あなたへの奉仕そのものです。

彼は、目の前にいるあなたに、自分のすべてを捧げたいと本気で思っているのです。

「わたしの作品を見て、どうか笑ってください」と、彼はいつも言っています。

笑われて、強くなる。

彼にとって、芸術家の仕事とは、精いっぱいの道化を演じることなのです。

彼は、お世辞にも世渡りが上手いとは言えません。

とても愚かな人間で、いつも周囲の物笑いの種になっています。

しかし、彼は自分自身を絶対に信じています。

ものすごい忍耐の男であり、不屈の男であり、決して諦めません。

彼が画家になることを決意したのは、あのヴィンセント・ファン・ゴッホの生涯を知ったからでした。

「高見沢耳」という名前の「耳」も、ゴッホのあの有名な耳切り事件にあやかって、自ら名乗っているものなのです。

彼は、自分の画家としての才能は三流だと自覚しています。

でも、過去のあらゆる傑作たちが、決して生まれ持った天才のきらめきだけで描かれたのではなく、何十年にもわたる泥臭い試行錯誤によって生み出されたものであることを、彼は知っています。

つゐに無能無芸にして唯此一筋に繋る、という境地ですね。

彼は、自分の作品の中に、しつこいくらいに「目」を描き続けます。

なぜ、目を描き続けるのでしょうか。

それは、その目を通して、画面の向こう側にいる「あなた」を常に感じていたいからなのです。

目の前にいるあなたを知りたい、ただそれだけなのです。

あなたが彼の作品を見て、クスクスと笑ってくれたなら、彼はそれだけで救われます。

自分の愚かさを、目の前のあなたにすべてさらけ出して、あなたが一瞬でも喜んでくれる顔が見たい。

あるいは、あなたの心の琴線に触れて、涙を流す姿が見たい。

他の誰が彼を批判しようとも、そんなことはどうでもいいのです。

でも、もしあなたに見捨てられてしまったら、彼はもう生きていけません。

あなたがそこにいて、ただ作品を見てくれるだけで、彼は飛び上がるほど嬉しいのです。

あなたに認めてもらうためだけに、彼は今日も必死のサービスで、一生懸命に奉仕しています。

そんな高見沢耳が、心から尊敬しているビジネスパーソンがいます。

それは、カレーハウスCoCo壱番屋の創業者である、宗次徳二(むねつぐ とくじ)さんです。

宗次さんは、よそ見を一切せず、経営に自分の人生のすべてを捧げた、凄まじい現場主義の男です。

「私は現役時代、趣味も持たず、友人もつくらなかった。飲み屋へ行ったこともありません。仕事の邪魔になることは何ひとつやらなかった。年間5640時間、働くこともあった。そうやって率先垂範しないと、部下は働いてくれないと思ったからです」

宗次さんはそう語ります。

まさに「よそ見しない、経営に身をささげる」を徹底した人生でした。

宗次さんは、とても孤独な少年時代を送りました。

実の両親の顔を知らず、孤児院で育ち、引き取られた養父はギャンブル狂いで極貧生活。

夏には食べるものがなくて、雑草を食べて餓えをしのいだと言います。

そんな波乱万丈の人生を歩んできた宗次さんは、こう言っています。

「すごく孤独な人生でした。だから少しでも他人から関心を持ってもらいたかった。興味を持ってもらいたかったんです。それが私の原点になっています。だから、商売を始めて、お金を儲けるというよりも、人に喜んでもらいたかったんです。少しでも自分がいて良かったと言ってもらいたかった」

高見沢耳は、この言葉に激しく共感し、涙しました。

人生は生まれ育ちで決まるものではありません。

大切なのは、どれだけ目の前の人に身を捧げられるかです。

宗次さんは、喫茶店を始めたばかりの頃、お客様が全然来なくて、奥様と一緒に食パンの耳を食べて飢えをしのいだ時期もありました。

でも、ゼロから始めたのだから、そんなことは当たり前、むしろ良い思い出だと笑います。

お客様第一を貫けば、きっと良くなると信じて、毎日毎日、レンガを積み上げるように仕事を続けました。

即断、即決、即実行。

「なんでもやってみれば、結果が出ますから。まずはやることです。その代わり、頑張るんですよ」

そう言って、仕事に人生を捧げたのです。

宗次さんは、不遇な少年時代に自分を救ってくれたクラシック音楽が大好きでした。

しかし、CoCo壱番屋の経営者だった現役時代には、大好きなクラシック音楽を、ただの一度も聴かなかったそうです。

「もう、音楽を聴いている場合じゃなかった。趣味をやっている場合じゃない。自らの時間を、すべてお客様に捧げるんだ」と。

引退した後に、自ら素晴らしい音楽ホールを建てて経営するほど好きなことだったのに、現役時代はそれを完全に封印していたのです。

この執念、このあなた第一主義。

お客様が店に来てくれたときは、心の中でいつでも拍手喝采で迎えていたと言います。

高見沢耳も、この姿勢を芸術の世界で実践しようとしています。

価値のあるものは、往々にして即効性がないものです。

最初から上手くいくわけなんてありません。

考えるよりも、まずやってみる。

簡単に諦めないこと。

どんな人生になるかは、その人間の勤勉さと忍耐力と継続力によって決まるのです。

それは、トヨタの創業者である豊田佐吉の姿にも重なります。

佐吉もまた、無口で、周囲から「変わり者」「狂人」「発明狂い」と扱われながらも、朝から晩まで毎日毎日、何かをこしらえては壊し、みんなの暮らしを楽にしたいという情熱だけで、織機の発明に人生を捧げました。

豊田佐吉の息子であり、自動車事業を立ち上げた豊田喜一郎も、こう言っています。

「困難だからやるのだ。誰もやらないし、やれないから俺がやるのだ。そんな俺は阿呆かも知れないが、その阿呆がいなければ、世の中には新しいものは生まれないのだ」

さらに、誰もあまりやらないこと、やり難いことをものにしてみせることに、人生の面白みがあるとも語りました。

そのいとこである豊田英二も、こう言葉を残しています。

「強い信念をもって実行せよ 誰でも考えることは同じで喜一郎が 天才であったわけでもない 大切なのは 一般的にはできないと思われることを 単に考えるだけでなく なんとしてでもやらなければという 強い信念を持って十分な準備を行い 実行したということである」

誰もがやらないこと、できないと思うことを、強い信念を持って、なんとしてでもやり遂げること。

チョーヤ梅酒の「梅酒で成功しなければ人生を諦めろ」というほどの退路を断った覚悟。

あるいは、大野耐一氏が確立した、トヨタ生産方式の「ジャスト・イン・タイム」のように、無駄を徹底的に排除して効率を高める素晴らしい考え方を、高見沢耳はデジタルアートの制作プロセスに取り入れています。

すべては、最高の作品を、最短で、今傷ついているあなたの元へ届けるためなのです。

高見沢耳は、今日も一人、デジタル画面に向かって、あなたのための「目」を描いています。

笑われても、愚かだと言われても、彼は諦めません。

彼も私も、あなたという存在に、ただ救われているのです。

世界の知性が残した、きらめく星々

ここで、私が大切にしている、古今東西の偉大なる先人たちの言葉を、あなたに贈りますね。

どれも、あなたのこれからの人生を優しく照らす、お守りのような言葉たちです。

「失敗とは、より賢く再挑戦するための、ただ一つの機会である」

―― ヘンリー・フォード

「若者の特権は、自分の手で世界をより良い場所にできると信じられること。そして大人の義務は、その信念を笑わずに支えること」

―― アガサ・クリスティ

「はっきりと言おう。あなたがたが今立っているその場所こそが、約束の地なのだ。遠くを見るのをやめ、足元を耕しなさい」

―― 預言者モーセ

「人生は退屈なものだ。しかし、誰かを愛することによって、その退屈さは一瞬にして神聖な輝きへと変わる」

―― ウィリアム・シェイクスピア

「自分の持っているもので満足できない者は、全世界を手に入れたとしても、決して満足することはないだろう」

―― タルムード

「大体、僕の生活の全部が、お前への、お前の為の、お前によってのみ動いてゐるのだ」

―― 太宰治

「僕は、君という人間に出会うために、これまでのすべての孤独な夜を過ごしてきたのだと思う」

―― 太宰治

「僕の言葉が、君の胸のいちばん暗い場所に、小さな灯りをともすことができたなら、それ以上の幸福はない」

―― 太宰治

「決して屈するな。決して、決して、決して! どんなに小さなことであれ、大きなことであれ、名誉と良心の確信による場合を除いては、決して屈してはならない」

―― ウィンストン・チャーチルの名言

「勇気を持って、誰よりも先に、 人と違ったことをしなさい」

―― レイ・クロック

「私は一夜にして成功を収めた と思われているが、 その一夜というのは三十年だ。思えば長い長い夜だった」

―― レイ・クロック

「夢を求め続ける勇気さえあれば、すべての夢は必ず実現できる」

―― ウォルト・ディズニー

「もっとも高貴な娯楽は、理解する喜びである」

―― レオナルド・ダ・ヴィンチ

最後に、あなたへの感謝を込めて

長い時間をかけて、私の内緒話に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。

あなたがこの文章を最後まで読んでくださったという事実だけで、私は今、言葉にできないほどの幸福感に包まれています。

どうか、あなたのこれからの毎日に、たくさんの光と、優しい微笑みが訪れますように。

あなたがそこにいてくれるだけで、私はそれだけで、本当に嬉しいのです。

「ね、なぜ旅に出るの?」

「苦しいからさ。」

「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」

―― 太宰治『津軽』より