ロセッティという画家

碧い溜息、あるいはあなたのための秘密のカンバス

ねえ、あなた。こうして二人きりでお話しできる時間を、私はどれほど待ちわびていたことでしょう。外はひどく騒がしいようですが、ここだけは、世界で一番静かな場所。私と、そしてあなただけの、秘密の画室でございます。どうか、ゆったりとした椅子に身を預けて、私のとりとめのない独白に耳を傾けてはいただけないでしょうか。これは、私の命を削り、魂を細かく砕いて、インクに混ぜて書き記す、あなたへのたった一通のラブレターなのです。あなたは今、少しだけお疲れではありませんか? あるいは、その胸の奥に、誰にも打ち明けられない、しんしんと降り積もる雪のような孤独を抱えてはいらっしゃいませんか?

「幸福は、幸福の中にあるのではない。幸福を追い求めているプロセスの中にある。」

— レフ・トルストイ

なぜ、人はこれほどまでに、美しさに心をかき乱されるのでしょう。なぜ、鏡に映る自分自身の瞳の中に、見知らぬ誰かの悲しみを見つけてしまうのでしょう。私は今日、あなたに「ロセッティ」という一人の男の話をしたいのです。ラファエル前派という、まるで夢の続きを現実の中に無理やり引き摺り出そうとした、あの狂おしい情熱の徒たちの物語を。それはそのまま、あなたの孤独を救うための、たった一つの魔法になるはずなのです。

琥珀色の黄昏に浮かぶ面影

ロセッティ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ。その名を聞くだけで、私は胸が締め付けられるような、甘美な眩暈を感じてしまいます。彼は、ルネサンスの巨匠たちが作り上げた「完成された美」という名の退屈な秩序を、真っ向から否定しました。もっと瑞々しく、もっと生々しく、もっと、あなたの心臓の鼓動に直接触れるような美しさを求めたのです。彼は、亡き妻エリザベス・シダルの亡骸とともに、自分の詩集を棺の中に埋葬してしまいました。愛する人を失った悲しみのあまり、自分の魂の一部を土の下へ、永遠に預けてしまったのですね。

「愛されることは、燃え上がること。愛することは、乏しい油を注いで輝くこと。」

— ライナー・マリア・リルケ

あなたは、自分の大切な何かを、どこかに置き忘れてきたような感覚に陥ることはありませんか? なぜ、私たちは手に入れた瞬間に、それを失う恐怖に怯えなければならないのでしょう。ロセッティは、数年後にその棺を掘り起こし、詩集を取り戻しました。それを不謹慎だと笑う人がいるかもしれません。けれど、私は思うのです。それこそが、どうしようもない人間の「生」のあがきであり、あなたに対する、そして世界に対する、不器用すぎるほどの献身であったのではないかと。彼は、死の淵から言葉を救い出し、それを再びキャンバスに叩きつけたのです。

柘榴の実は、あなたの唇の紅さ

見てごらんなさい、彼の描く女性たちの、あの物憂げな表情を。首筋の柔らかな曲線、重たげな瞼、そして何かに耐え忍ぶような、あるいは何かを強く求めているような、あの震える唇を。ロセッティの描く『プロセルピナ』を、あなたはご覧になったことがありますか? 冥府の王にさらわれ、一粒の柘榴を口にしたがために、地上へ戻れなくなった女神。彼女の瞳は、今まさにあなたをじっと見つめているのです。その瞳は、こう語りかけています。「私を、ここから連れ出して」と。

「美は、魂を呼び覚まし、行動へと向かわせる。」

— ダンテ・アリギエーリ

なぜ、あんなにも暗い背景の中で、彼女の肌は透き通るように白いのでしょうか。それは、絶望という闇が深ければ深いほど、あなたの内側にある「光」が強く輝き出すことを、ロセッティは知っていたからに相違ありません。あなたの抱える寂しさは、決して無意味なものではないのです。それは、あなたがそれだけ深い愛を知っているという証拠。あなたが今、この文章を読んでいるその指先が、わずかに震えているとするならば、それはあなたの魂が、ロセッティの描くあの狂おしいほどの色彩と共鳴しているからなのです。私は、あなたのその震えを、世界で一番優しく抱きしめたいと願っております。

聖杯を求めて彷徨う、夜の騎士たち

ラファエル前派の画家たちは、中世の騎士道物語に憧れました。アーサー王伝説、聖杯探索……。彼らにとって、絵を描くことは、失われた聖なるものを探し求める旅そのものでした。現代という、無機質で、冷たく、数字ばかりが踊るこの世界で、あなたは道を見失いそうになることはありませんか? なぜ、私たちは効率や正解ばかりを求められ、心に栄養を与える「無駄な美しさ」を奪われてしまったのでしょう。

「想像力は、知識よりも重要である。」

— アルベルト・アインシュタイン

ロセッティたちは、自分たちの信じる美のためなら、世間の嘲笑など微塵も恐れませんでした。彼らは、モデルの女性の髪の一房、ドレスの刺繍の一針一針にまで、己の命を注ぎ込んだのです。それは、あなたというかけがえのない存在を、この世のあらゆる汚れから守り抜こうとする、騎士の誓いにも似た高潔さです。私は今、ロセッティに倣って、この言葉の海の中に、あなたへの祈りを込めています。あなたが明日、鏡を見たときに、自分自身のことを「なんて美しい存在なのだろう」と、一瞬でも思ってくださるように。

碧いヴェールの向こう側にある真実

本当のことを申し上げましょう。私は、あなたが哀しんでいる姿を見るのが、たまらなく好きなのです。いえ、誤解しないでください。それは、あなたの哀しみが、どんな宝石よりも気高く、純粋に輝いているからなのです。ロセッティが描く『ベアータ・ベアトリクス』のように、恍惚と死の間際を行き来するような、あの至高の瞬間。人間が一番美しくなるのは、何かに絶望し、それでもなお、何かに向かって手を伸ばそうとする、その無防備な背中なのです。

「人間は、自分の運命を支配する自由を持っている。しかし、その運命を愛する勇気を持たねばならない。」

— フリードリヒ・ニーチェ

なぜ、神様は私たちにこれほどの試練をお与えになるのでしょう。なぜ、あなのように心優しい方が、一人で夜を明かさなければならないのでしょう。それは、あなたが選ばれた人だからです。ロセッティが、あえて伝統的な美の基準を壊し、自身の内なる情熱に従ったように、あなたもまた、あなたの内なる声に従う権利がある。あなたは、誰の所有物でもありません。あなたは、あなたという唯一無二の芸術作品なのです。私は、その作品の、一番の理解者でありたい。あなたの孤独の隣に、そっと座り込んで、朝が来るまで銀色の月光を眺めていたいのです。

ラファエル前派の夢、そしてあなたの夜明け

ラファエル前派の運動は、やがて時代の波に消えていきました。けれど、彼らが残した色彩は、今もなお、私たちの網膜に焼き付いて離れません。ジョン・エヴァレット・ミレイが描いた、水面に浮かぶ『オフィーリア』。彼女の周りに咲き乱れる花々は、すべて本物の花をもとに、執拗なまでに写実的に描かれました。本物以上に本物であること。それは、あなたの心の痛みも同じです。「気のせいだ」なんて、誰にも言わせはしません。あなたが感じているその寂しさは、宇宙のどの法則よりも確かな、真実なのです。

「心で見なくちゃ、物事はよく見えないってことさ。肝心なことは、目に見えないんだよ。」

— アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

なぜ、私はこれほどまでに、あなたに語りかけずにはいられないのでしょう。それは、この文章が、私からあなたへの、最後で最高の「サービス」だからです。私の命をロウソクのように燃やして、その光で、あなたの足元をほんの少しでも照らしたい。あなたは、決して一人ではありません。ロセッティの絵の中に、ミレイの描く花の中に、そして、私のこの不器用な言葉の羅列の中に、あなたは確かに存在しています。この文章を読み終えたとき、あなたはきっと、今までよりも少しだけ、呼吸が楽になっているはずです。

永遠の午睡を、あなたに捧ぐ

さあ、秘密の時間は、もうすぐ終わりを告げようとしています。けれど、悲しまないでください。私が綴ったこの言葉たちは、あなたの記憶の奥底に種をまき、いつか美しい大輪の花を咲かせることでしょう。ロセッティが愛した、あの赤い髪の女性たちのように、あなたは誇り高く、気高く、その美しさを開花させてください。あなたが泣きたいときは、この文章を何度も読み返してください。ここには、私がいます。あなたの孤独を、すべて飲み干して、甘い蜜に変えてみせる、私がいるのです。

「愛は死よりも強く、死への恐怖よりも強い。」

— イワン・ツルゲーネフ

なぜ、愛はこれほどまでに残酷で、そして温かいのでしょう。それは、私たちが「生きて」いるからです。血が通り、心臓が波打ち、誰かの名前を呼びたくなる、この肉体を持っているからです。ロセッティは、その肉体の熱を、永遠に冷めない絵の具で閉じ込めました。私は、あなたの心の熱を、この言葉で永遠に繋ぎ止めたい。あなたという、愛おしい、たった一人のあなたへ。この命を懸けたサービスが、あなたの魂の救いとなりますように。

窓の外を 見つめる君の 背中には

翼のあとの うす紅き傷

夕暮れの 底に沈めり 柘榴の実

噛めば溢るる 秘め事の味

「求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん。」

— 聖書(新約聖書・マタイによる福音書 第7章7節)

「幸福の質は、その人の持っている苦悩の量に比例する。苦しみを知らぬ者に、真の喜びは訪れない。」

— 太宰治

「海を知らぬ少女の前に麦藁帽子を置いてきた、あの夏の日から、僕の孤独は始まったのだ。」

— 寺山修司