
ゴッホと豊田佐吉
私の尊敬する画家のゴッホとトヨタグループの創業者である豊田佐吉は、かなり似た人間に思えます。
豊田佐吉は、トヨタグループの祖業である織機の発明、改善に人生を捧げた人間でした。
豊田佐吉について書かれた本の中から、いくつかのエピソードを紹介します。
「仕事が思うように運ばず、苦心懊悩は一通りではなかった。朝から晩まで毎日毎日何かこしらえては壊す、造ってはまた造りなおす。周囲から変わり者、狂人扱いにされたのも至極」
「昔から発明家という発明家は悉く貧乏で、おまけに人情の離反、果ては虐げられる。凡ゆる人間の悲哀を嘗め尽くして後、漸く基の大願望を成就する」
「豊田佐吉の日常は発明に明け発明に暮れる孤独閉鎖の生活であった。翁は社交界にも顔を出さず、名を知られようとせず、何の道楽も、何の嗜好も持たず、只一本の鉛筆、一枚の紙を相手に、朝から晩まで一室に閉じこもりて考案に耽ると言うのが翁の平生であった」
このように、豊田佐吉と画家ゴッホの性格や日常は、非常に似ていると思います。
そして、彼らが亡くなった後も、長い間、沢山の人の人生や生活に大きな影響を与えたのも頷けます。
トヨタ生産方式で絵画を造る
日本を代表する大企業のトヨタ自動車は、大変参考になる会社です。
トヨタを世界一の自動車会社に発展させた、トヨタ生産方式という考え方は、どの業種にも応用出来るものだとおもいます。
特に全てのメーカー(画家も含めて)は、実践するべきです。
私の絵画生産の基本的な考えも、トヨタ式生産方式が根幹になっています。
自動車を生産するのも、ウイスキーを生産するのも、絵画を生産するのも同じことです。
トヨタ生産方式は創業者の豊田佐吉と息子の豊田喜一郎によって、考えだされた生産方法です。
この方法は、二つの考え方が中心になっているものです。
1、ニンベンのついた自働化
「異常がわかる、異常で止まる、異常で止める」
豊田佐吉の作った機械は、明治・大正時代から不良品が出たら、機械が自動で止まる仕組みになっていた。
2、ジャスト・イン・タイム
「毎日、必要なものを、必要な数だけつくれ」
「間に合えば良い、余分に作るな」
この二つの考えは、トヨタグループがもともと貧乏だったために、考えだされたものです。
不良品や売れない商品を極限まで減らすというトヨタ生産方式の仕組みは、トヨタの高収益体質の根幹です。
商品の質を上げながら、無駄を無くすことが目的です。
トヨタ生産方式は、事業の財務体質を改善させることができます。
トヨタ自動車は『トヨタ銀行』と言われるようなお金持ちの会社になり、貯めた大量の資金で研究開発をするので、他の会社が追い付くことが出来ないのです。

トヨタ語録
私が絵画制作中に道標としている言葉を紹介します。
「自分の城は自分で守れ」
「ケチケチ商法」
「ほんとうのガメツさとは、それは質素を表すのである。精いっぱいしまつ倹約して、商いのムダを省くのが、江州商人の真面目である」
「田舎者的精神」「不屈の闘志」「根性」
「人生すべては勝負である。勝負のすべては闘志と努力である」
「よい品、よい考え」
「純粋と勤勉が大事。骨惜しみをしない。苦労をいとわぬ」
「作ってやる、売ってやるではいけない。買ってもらう、作らしてもらっているという気持ちでなくてはいけない」
「骨惜しみをしない。苦労をいとわぬ。しぶとくてガメツくて、欲が深くて、何事にも真っ正直。トヨタの最強美点である。」
「十円かけてつくったものを十一円で売る。この場合の一円は適正利潤である。そして、もし十一円で買ってくれる人がなかったら、なんとか十円で売れるように考える。そのためには、コストを九円にまで引き下げねばならない。ならば、その工夫をせよ」
「本当の競争とは、企業のオリジナリティを売ることである、その会社ならではの技術、そしてサービスを売る。むろん安くできればそれにこしたことはない。要は商品価値そのもので勝負すればいいのだ」
「強い信念をもって実行せよ 。誰でも考えることは同じで喜一郎が 天才であったわけでもない。 大切なのは 一般的にはできないと思われることを 、単に考えるだけでなく 、なんとしてでもやらなければという 強い信念を持って、十分な準備を行い 実行したということである」
「機械的に考えるのではない。 乾いたタオルでも知恵を出せば水が出る」
「モノの値段はお客様が決める 。利益はコストの削減で決まる 。コストダウンは モノづくりを根本のところから追及することによって決まる」
「発明は知識そのものよりも、それをいかに自分のものにしているかにかかわる。学校を出ない人が往々にして相当な発明をするのはそれ故である。これを世の人のために活用し得るまでには、いろいろな研究と大きな努力がいる。その努力の中に発明が生まれてくるものだと私は思っている。発明は努力の賜である」
「困難だからやるのだ。誰もやらないし、やれないから俺がやるのだ。そんな俺は阿呆かも知れないが、その阿呆がいなければ、世の中には新しいものは生まれないのだ。そこに人生の面白みがあり、また俺の人生の生き甲斐が、そこにあるのだ。出来なくて倒れたら、自分の力が足りないのだから潔く腹を切るのだ」
大野耐一氏の考え方
トヨタ生産方式を第二次世界大戦後、本格的に生産現場に植え付けた第一人者に、大野耐一という有名な方がいます。
その方が講演で話した内容が、非常に勉強になるもので、少し抜粋したいと思います。
「いま言ったように売れない物を、いくら能率を上げて安く作ったとしても、企業にとって何になっているのだろうか。
例えばみなさん方が、いままで自分の部下が10人で100個作っていた物を、この頃ちょっと能率が上がったので120出来るようになった。
しかし売れるのは100個しか売れません。
そしたら100個作るのが、一番大事なことだ。
能率を上げて120作ったから1個あたり相当安くなったはずだなどと、考えてもこれは全然無駄なことである。
しかもこれが80しか売れませんよと、そうしたら80をどうやって安く作るんだということを第一線の監督者は考えてもらわないと、その企業がみんな一生懸命真っ黒になってやりながら会社を貧乏にしている。
どうせ来月は売れるだろうなどと言って作ってゆく、しかも能率が上がった。
まあ、気分が良いのでますます出来るようになったというと、今度は置き場がなくなってくる。
そうなると倉庫を建てないと置き場がないじゃないかと。
私どもか自動車に行った戦後間もない頃でも、何かこう各部品のラインに出来るというともう、すぐに持って行けと、運搬にすぐ持って行けと、ここに置いておいたなら皆の士気が下がるから、もう出来たらどんどん運んでくれ。
あるいは材料のほうはどんどん持ってきてドンと積んでくれと、そうすると皆がやる気になるというな変な考え方が、戦後相当続いた訳なんです。
従って中間倉庫はどんどん増えて、そうするとここへ倉庫番が要るようになってくる。
棚も作らにゃならん、そうすると結局せっかく現場で安く作ったつもりのものを倉庫へ入れる、倉庫番を付ける、だんだん品物が増え種類が増えると、もうひとりではとても管理出来ませんなどと言うと、今度はコンピュータ屋さんがうまいことを言ってきて、コンピュータを入れるとちゃんと間違いなくやってくれますよなどと言われると、いま8人いるところが、コンピュータを入れると女の子ひとりで、ちゃんとうまくやってくれます、ボタンを押すと要る物がちゃんと出てきますとか、このボタンを押すとちゃんと所定のところへ自動で持ってきますよ、というと何だか便利なような気がしてコンピュータ屋さんを儲けさせちゃう。
するとせっかく安く作ったのをコンピュータ入れるにしたって、倉庫を建てるにしたって、あるいは倉庫番を使うにしたって、皆お金が要るのではないだろうか。
現場が一生懸命安く作ったやつを、なぜ高くして行かねばならんのかと、考えてもらわないといかん。
現場が一生懸命やって能率が上がった、沢山出来るようになった。
売れないほど沢山出来ることは、結局それをどんどん高くして行くだけだ。
本当のお客さんの手へ移るまでには、社内で高くしているような面が非常に多いのではないだろうか。
それなら初めから作らないでくれた方が、倉庫も建てないで済むし、あるいは倉庫へ持って行くまでに、リフトトラックで運ぶ、これはガソリンが要るのではないか、あるいはタイヤも減ってくるのではないか、いろんなことで、結局売れない物をみんな作っているのではないか。
ゴールドラット博士の言葉
トヨタ生産方式を非常に評価しているゴールドラット博士の言葉も紹介します。
大野氏が生産で成したのは、生産における最も基本的な仮定への挑戦です。
例えば、高価な生産設備を所有していて、作業員に給料を払っているのなら、作業員が設備のそばで何もせず、ただ立っていたらそれはムダです。
我々はそう信じ、疑いもしません。
あえて考えもしません。
それは我々が大野氏の域に達していないからです。
このことを彼は思考し、こう述べています。
作業員にして欲しいことが何であれ、それが今、必要でないのなら、何もせず設備のそばで突っ立っているほうが、前倒しして作るよりも遥かに良いのだ。
これがトヨタ式生産方式の真髄です。
前倒しして作らない。
なぜならそれは流れを悪化させ滞留を起こすから。
流れが鍵なのです。